Dif version 8.0 バージョンアップ

概要

Dif version 7.3 から8.0へバージョンアップをしました。国立研究開発法人 土木研究所より平成28年4月に「河川堤防の液状化対策の手引き」が公開されました。国土交通省河川局のホームページにある「河川構造物の耐震性能照査指針・解説」が一部改訂されました。これに伴い静的FEM液状化解析に関する対応を行いました。これ以外にも幾つかの改良を行いDif version8.0と致しました。主な改良内容を以下に示します。

  • 静的FEM液状化解析に関する対応
  • バンド幅低減機能強化
  • ジョイント要素改良
  • 物性変更時の操作
  • 線形バイリニアモデルの追加
  • 線要素の削除

静的FEM液状化解析に関する対応

液状化判定式が一部改訂になり、改訂前と改定後の大きな違いは2点あります。1点目は細粒分を多く含む土は改訂前と比較すると大きな繰り返し三軸強度比が得られるようになりました。細粒分を多く含むとN値が小さくなり、粘性土のような土でも繰り返し強度比が小さくなる場合がありましたが、改定後には妥当なRLが得られるようになりました。「図- 細粒分含有率 Fcと補正N値増分 Na-N1」に示すようにFcは40%以上になると補正N値増分の増加割合が大きくなります。

2点目は繰り返し強度比の最小値は0.1程度となりました。RLは0.1未満といった非常に小さな値を数値計算で用いると非常に大きな変形が発生することと、動的解析のような計算では計算が発散するようなこともありますので、RLは0.1程度で頭打ちにするのが望ましいと考えられます。

D'sNAPのメイン画面の[Tool]-[SLA編集]から液状化解析用の定義ファイル作成アプリケーションを起動し、[液状化]-[条件設定]メニューから液状化判定式を改訂前の平成19年指針と改定後の平成28年指針を選択できるようになりました。

換算N値 N1と繰り返し三軸強度比 RL関係図

図- 換算N値 N1と繰り返し三軸強度比 RL関係図

細粒分含有率 Fcと補正N値増分 Na-N1関係図(N1=1)

図- 細粒分含有率 Fcと補正N値増分 Na-N1関係図(N1=1)

バンド幅低減機能強化

ジョイント要素を導入するとバンド幅が大きくなりメモリオーバーのエラーが発生する場合がありました。計算法にCG法を選択すればバンド幅は無関係になりますが、非対称な剛性マトリクスではCG法は適用できませんので、このような場合にはジョイント要素の導入が困難でした。64ビットソルバーを用いて対応する方法もありますが、バンド幅が大きくなりすぎると計算に非常に多くの時間を要することとなります。今回の改良ではジョイント要素導入時にも最適なバンド幅の低減を行えるように改良を行いました。

ジョイント要素改良

ジョイント要素には使用上の制限事項があることや、定数に関する資料が少なく実測値を再現するようにパラメーターを決める必要があり、実務での使用が限られておりました。また、完全に剥離してしまうと応力が完全に遮断されてしまい、危険側の結果が得られる場合もありこのような場合には利用ができませんでした。今回の改良でジョイント要素の物性変更の対応やジョイント要素の両面をできるだけ交差させないようにプログラムを改良したことにより、使用上の制限を少なくしました。改良後においても入力値は、実務と解析の対比の中で決定する以外ありませんが、実測値を近似しやすくはなりました。

物性変更時の操作

物性変更時の操作として以下の2つの機能を追加しました。

  • 降伏面を再設定しない
  • 応力を引き継がない

これまでの物性変更時の操作としては、降伏面を再設定し応力を引き継ぐ仕様になっていましたが、ユーザーが選択できるように拡張しました。降伏面の引き継ぎは降伏面が更新される関口・太田モデルのようなカムクレイ系のモデルが対象となります。

降伏面を再設定しないケースは、盛土後にドレーンにより地盤の透水性のみ変えたい場合に使用します。このような場合には降伏面はそのまま引き継いだほうがよいです。

応力を引き継がないケースは、置き換えのように材料が置き換わるような場合です。地中に固化改良を行うような場合に使用します。ただし、線形弾性モデルを利用している場合には、応力を引き継いでも引き継がなくても変位の結果は変わりません。応力依存モデルを用いた場合には変位の結果が変わります。

線形バイリニアモデルの追加

降伏もしくは、引張破壊していない状態では初期ヤング係数と初期ポアソン比が使用され、降伏応力を超えるか、最小主応力が最小引張応力より小さくなった場合に、第二勾配のヤング係数と第二勾配のポアソン比が使用されるような線形バイリニアモデルを追加しました。降伏判定はモールクーロンの破壊基準に基づいた方法となります。線形モデルですので、計算が発散することはなく場合によっては扱いやすいことがあります。

線材要素の削除

線材要素の削除は、工程データ-詳細データにある「線材追加」で物性番号を0とすることで対応可能でした。今回の改良で「線材削除」の項目を追加し、除荷率を設定できるようにしました。通常は除荷率には1.0を入力しますが、線材除荷時に外力を作用させたくない場合には0.0を入力します。例えば、矢板撤去時に矢板に適切でない応力が作用している場合には除荷時に異様な挙動を示す場合があります。このような場合には除荷率0.0として利用します。また、矢板の引き抜きのような問題は、平面要素を除荷して対応することになります。