高性能要素

概要

Difは地盤の圧密解析を行うためのソルバーですが、全応力解析もサポートされていますので、構造物の解析にも使用されることがあります。構造物をモデル化する際、曲げ変形を追跡する必要がある場合には、ビーム要素を使用します。Difでサポートされている平面要素は1次要素(3節点の三角形要素または、4節点の4角形要素)ですので、曲げ変形を追跡するには非常に多くのメッシュ分割が必要になりますので、通常、曲げが問題となる構造物には使用しません。平面要素で曲げ変形を求めようとすると高次の要素が必要になりますが、(例えば、8節点の4角形要素など)Difは高次要素をサポートしていませんので、4節点の4角形要素で曲げ変形に対応できる高性能要素を導入しました。

片持ち梁の計算例

下図の片持ち梁の計算条件で、ビーム要素と高性能要素を比較した結果を以下に示します。要素数はどちらも10です。高性能要素はビーム要素と同じ結果が得られており、少ない要素数で理論値を再現できます。

計算条件図

図- 計算条件図

鉛直変位分布図

図- 鉛直変位分布図

アンバランスなメッシュ分割

アンバランスなメッシュ分割で計算精度を確保できるかをチェックした例を以下に示します。Case-1は理論値より1割程度小さな変位となっていますが、Case-2はほぼ理論値と同じ結果が得られています。アンバランスなメッシュにおいても少ない要素数で計算精度を確保することができます。

メッシュ図 要素数10(Case-1)

図- メッシュ図 要素数10(Case-1)

メッシュ図 要素数40(Case-2)

図- メッシュ図 要素数40(Case-2)

鉛直変位分布図

図- 鉛直変位分布図

せん断を考慮した片持ち梁の計算例

下図の片持ち梁の計算条件で、ビーム要素、1次要素、高性能要素を比較した結果を以下に示します。この計算条件は、対象物の厚みと長さが同じで、せん断の影響を考慮する必要があります。ビーム要素は、せん断の影響は考慮できませんので、曲げ変形のみが得られます。1次要素はせん断の影響が大きくなったために理論値程度の結果が得られています。高性能要素はせん断の影響も考慮されますので、曲げとせん断の両方を考慮した計算が可能です。

計算条件図

図- 計算条件図

鉛直変位分布図

図- 鉛直変位分布図

壁の厚みの効果

盛土の対策工として鋼管矢板など比較的厚みある材料が使用される場合があります。下図は、厚みを変化させた場合のビーム要素と高性能要素における壁の水平変位深度分布図の例です。壁厚0.5mのケースは、ビーム要素と高性能要素で変位は大きくは変わりませんが、壁厚1.0m程度になると厚みの効果でビーム要素と比べると高性能要素の変位が少し小さくなっています。

水平変位深度図

図- 水平変位深度分布図

表- 壁上端部の水平変位一覧表

壁厚(m) ビーム要素 高性能要素 差(%)
0.5 27.4 26.4 3.7
1.0 29.1 26.8 8.1
2.0 29.0 23.4 19.4

適用範囲

高性能要素は曲げ変形を追跡するのにすぐれた要素ですが、全ての解析に適用できるわけではありません。主に全応力解析に適用できます。Difは有効応力解析を行うためのソルバーで、有効応力解析に特化した力学モデルが幾つか用意されています。これらの力学モデルと高性能要素は相性が悪い場合がありますので、従来通り1次要素を用います。せん断強度低減法は全応力解析で、Difでは選択的次数低減積分法を適用していますが、稀に計算が発散する場合がありますので、せん断強度低減法での適用も避けたほうがよいと考えられます。