せん断強度低減法

概要

Dif 開発用バージョンに Dif SSR-FEM を追加しました。Dif SSR-FEM は2次元せん断強度低減法プログラムで、ソルバー(計算部)は Dif 開発用バージョンを用いています。

せん断強度低減法は全応力解析手法であり、斜面の強度定数を徐々に低減し、斜面全体が崩壊した時点で全体安全率を定義する方法です。具体的な計算方法を示します。土のせん断強度τfは下式のモールクーロン式により与えることができます。ここに、cは粘着力、φはせん断抵抗角、σはすべり面上の垂直応力です。

せん断強度数式1

せん断強度低減法では土のせん断強度を係数Fで割った形で示されます。

せん断強度数式2

Fに小さな値を与えるとせん断強度は大きな値となり、モールの応力円はモールクーロンの破壊線から外れ、応力状態は弾性状態になります。Fが徐々に大きくなると、せん断強度は徐々に小さくなり、次第にモールの応力円はモールクーロンの破壊線に近接します。あるFに対して、モールの応力円は、モールクーロンの破壊線を越えてしまいますので、モールの応力円とモールクーロンの破壊線が接するように応力補正が行われます。この応力補正を行った際のアンバランスな力は、残差力として節点に与えられます。残差力による変位が所定の収束判定に収まるまでこの計算を繰り返し行います。ある時点でFEM計算が発散しますので、この時点のFの値を全体安全率として定義します。

単純斜面による解析例その1

単純斜面による解析例を以下に示します。テイラーの式により得られた安全率は0.9625、Difで得られた安全率は0.96となり、理論値と概ね一致しています。

最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)

図- 最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)

メッシュ変位図(崩壊直前の増分)

図- メッシュ変位図(崩壊直前の増分)

変位ベクトル図(崩壊直前の増分)

図- 変位ベクトル図(崩壊直前の増分)

単純斜面による解析例その2

単純斜面による解析例を以下に示します。極限平均法による簡易ビショップ法で得られた安全率は1.34、Difで得られた安全率は1.34となり、極限平均法と概ね一致しています。

最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)

図- 最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)

臨界円弧図(簡易ビショップ法)

図- 臨界円弧図(簡易ビショップ法)

水平な軟弱層のある複合すべり面の解析例

下図のような複合すべり面を有する条件の解析例を示します。

計算条件図

図- 計算条件図

手計算により得られた安全率は0.99、Difで得られた安全率は0.97となり、手計算と概ね一致しています。SSR-FEMはすべり線の仮定を設けないことからこのようなケースの計算に有効です。

最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)

図- 最大せん断ひずみコンタ図(崩壊直前の増分)