メッシュ作成の注意事項

FEM解析を行う上で、最も重要な作業はメッシュデータの作成です。これまでユーザーの皆様から頂いているご質問について、メッシュデータに関するもの、あるいはメッシュデータに起因するものがそのほとんどであることも、このことを裏付けています。

メッシュデータの作り方次第では、計算を行うことができなくなるだけではなく、入力データ全体が煩雑にない、ひいては全体の作業効率を落とすことにもつながります。

ここでは、メッシュデータ作成時における特に重要な8項目の注意事項を示します。

メッシュ作成の概要

D'sNAP搭載のメッシュジェネレータは、圧密解析特有の複雑な工程データ作成を容易にするために設計されています。まず節点データを作成し、これを用いて領域データ、細分割線データを順次作成します。また、メッシュジェネレータは任意のメッシュデータが解析可能なものであるかどうかのチェックを行う機能を備えています。

メッシュの構成要素

節点

領域境界の指定や細分割線の基準点として参照される位置を定義します。(下図の点13、点14など)

領域

掘削、盛土などを行う、単一物性を適用する範囲を定義します。(下図の点13、25、60、14を環状に結んだ範囲内)

細分割線

解析領域をFEM解析要素へと分割するための境界線を定義します。(下図において破線で示す点60を通る鉛直線など)

メッシュの構成要素

メッシュの簡略化について

下図のような解析条件図でFEM解析を行うのであれば、メッシュを作成する際にはある程度簡略化したほうが良いでしょう。

例えば、地表面が少し削れていたり出っ張っていたりしても、まっすぐな境界としてモデル化します。同様に盛土中央部が若干高くなっているところなども、まっすぐな境界としてモデル化します。

FEM解析を行う上で無視できるところは省略してしまうのが良いでしょう。

解析条件図

解析条件図

以下に解析条件図から作成したメッシュの例を示します。下図の2つのモデルでの解析結果はほとんど変わりません。

細かすぎるメッシュの場合、節点同士が密になり過ぎたり細分割線を作成する際に隣り合うもの同士が密になりすぎたりする可能性があります。

細かすぎるメッシュの例

細かすぎるメッシュの例(領域図)

簡略化したメッシュの例

簡略化したメッシュの例(領域図)

節点指定の方法

節点指定を行う場合、なるべく絶対座標での指定を少なくすることをお勧めします。そうすることによって数値計算上のエラーを防ぐことでき、メッシュを変更する際の作業量を減らすこともできます。

下図のような解析条件の場合は例に、絶対座標での指定を少なくした節点指定の方法を示します。

解析条件図

D'sNAP マニュアルより一部抜粋

座標指定

節点のX座標値、Y座標値を実数値で入力します。

設定例
X座標値Y座標値
0.00.0
100.0-18.0
32.511.0
ライン上のX座標(Y座標)

直線を定義する節点のペアと座標値の種類を示す"X"(または"Y")、座標値を入力します。

設定例
節点1節点2種類座標値
12X50.0
12X12.5
23Y-8.2
ライン上のX座標(Y座標)を示す節点

直線を定義する節点のペアと座標値の種類を示す"X"(または"Y")、座標値を示す節点を入力します。

設定例
節点1節点2種類座標値を示す節点
12X12
12X18
23Y1
2直線の交点

直線を定義する節点のペアを2組入力します。

設定例
節点1節点2節点3節点4
121112
122218
2381

領域指定の方法

同じ物性値の土層がある場合には1つの領域として指定します。同じ物性値の土層をいくつもの領域に分割して指定する必要はありません。

下図の解析条件について領域を指定する場合、砂層-1の左側・同右側・地盤改良-1と3つの領域に分割する必要はありません。この場合は砂層-1・地盤改良-1と2つの領域として指定することができます。

この場合、例えば粘土層-1が解析の初期状態で存在し、その一部が後に改良されるわけですから、粘土層-1を9, 10, 12, 11とし、改良域を13, 14, 5, 8として指定すればよいわけです。こうした領域の重ね合わせを積極的に利用することで入力データは極めて簡潔になります。

解析条件図

細分割線指定の方法

細分割線には9種類の指定方法がありますが、ここでは上手な細分割線の指定方法を示します。

例えば、下図凸領域(左側)において、節点7から下向きに細分割線を引く場合には、V 7とはせずにVD 7とします。V 7と設定すると6-7間にも細分割線を引くこととなり、余分な細分割線を引くことになります。

また、下図凹領域(右側)において14-3に細分割線を引く場合には、14-9間と8-3間の2か所に分割して設定を行います。この場合に14-3間に設定すると9-8間に余分な細分割線を引くことになります。

細分割線(あるいは領域境界線)が重なっていても問題はありませんが、なるべく余分な細分割線を引かない設定を行うことで、修正作業が必要になった場合の煩雑さを排除することができます。

凸領域図(左側)、凹領域図(右側)

細分割線指定の注意事項

細分割線を設定する際には、細長い要素ができないようにする必要があります。下図要素の拡大図で示した要素はとても細長い要素になっています。要素の縦横比はなるべく3程度に収まるようにしてください。

縦横比が大きな要素の例

メッシュチェック

メッシュの作成が終了した際には、必ずメッシュチェックを行うようにしてください。

メッシュチェックを行うと、現在のメッシュデータが解析可能なものかどうかをテストして、ウィンドウ上でレポートします。FEM解析可能なメッシュです。と報告される事を確認してください。

メッシュチェックを行った際に下図メッシュ作成時の場合には、コメント画面にはS-Node is Cancel : 節点番号と表示され、その節点が解析時に生成されないことを示します。この節点を生成するためには細分割線を追加してください。また、不必要な節点であればキャンセルされていても問題はありません。

キャンセルされる節点とその回避法

バンド幅の低減方法

バンド幅を低い値に設定することで解析時に必要となるメモリー量を軽減することができます。以下に例を示します。

メッシュチェック

新しくメッシュを作成した場合には必ずメッシュチェックを行い、解析可能なメッシュデータであることを確認してください。このときバンド幅が報告されます。

節点整列方向によるバンド幅低減方法

メッシュチェックにおいて、節点番号の整列方向を水平方向鉛直方向で行い、いずれかバンド幅が小さくなる方向を設定します。解析時には最後に行ったメッシュチェックで示された方向を用いて節点番号を整列しますのでご注意ください。

Dif for D'sNAPなどの線要素を持つデータのバンド幅低減方法

ビーム材がある場合には、工程データでビーム材を連続指定に設定してください。下図にビーム材を連続指定とした場合と非連続指定とした場合の違いを示します。

以下は掘削の後に切梁などの線材を挿入する場合の例です。ここにトラス材を用いると構造が不安定になり、Dif for D'sNAP 実行時にエラーと処理されますのでご注意ください。

線材を設置する場合の例

連続指定の場合は、24-34、34-44、44-56からなるビーム要素が自動設定されます。

非連続指定の場合は、24-56からなるビーム要素が設定され、バンド幅が大きくなります。