モンテカルロ法による計算例
概要
モンテカルロ法により物性パラメータのバラツキを考慮し、DACSARによる断面2次元圧密変形解析を実施しました。1000ケースの計算を実行させる必要があり、2012年に開発しました一括計算プログラムを利用して解析を行いました。モンテカルロ法による計算は、変形量の確率分布のヒストグラムを得ることができます。例えば、沈下量が1mとなる確率はx%や、沈下量が1.2m以内に収まる確率は90%以上といったような結果です。このような結果を利用することにより信頼性設計を行うことができます。
計算条件
計算条件を以下に示します。
1)解析断面
解析断面図を以下に示すします。60日間で盛土を載荷し、圧密完了まで放置する条件としました。試算用のメッシュであり節点数は475の小規模モデルとしました。
2)物性条件
沖積粘性土Ac1層、Ac2層の「平均」が基準となるパラメータです。「最小」と「最大」は、1%確率時における圧縮指数の最小値・最大値をもとにパラメータを決定しています。
3)圧縮指数の頻度確率
パラメータのバラツキの考慮は、Ac1層とAc2層の圧縮指数とし、パラメータのバラツキは正規分布を仮定しました。下図に圧縮指数の頻度確率を示します。凡例の「確率頻度」は、乱数を1000回発生させた際に得られた頻度確率の一例です。σは標準偏差、μは平均値を示しています。
計算結果
各種計算結果を以下に示します。計算結果は全て圧密完了時のデータを採用しています。
1)平均・最小・最大の計算結果
盛土法尻位置における最小ケースと最大ケースの最大水平変位量の差は、0.14mです。地表面における最小ケースと最大ケースの最終沈下量の差は、0.5mです。パラメータのバラツキにより概算ですが変形量にこの程度の差が生じます。
2)モンテカルロ法による計算結果 その1
モンテカルロ法による各種計算結果を以降に示します。モンテカルロ法による繰り返し計算回数は1000回としました。
下図は各繰り返し計算時における盛土法尻の最大水平変位と地表面の最大鉛直変位(沈下量)です。1%確率時の最小・最大からはみ出る変位が一部で発生していますが、わずかな確率です。水平変位は0.45m~0.65mを外れる確率は0%、沈下量は-1.08m~-2.0mを外れる確率は0%です。
3)モンテカルロ法による計算結果 その2
下図は計算回数と盛土法尻における最大水平変位の平均値です。平均値は、Σ水平変位/計算回数で定義しています。最大水平変位の平均値は、概ね100回程度の計算回数で収束しており、平均のパラメータを使用した値に近くなっています。パラメータのバラツキが大きく、正規分布を仮定しない場合には、計算回数は数千回、場合によっては、数万回程度でなければ収束しない場合があります。
下図は計算回数と地表面における最大鉛直変位(沈下量)の平均値です。水平変位と同様に概ね100回程度の計算回数で変位は収束しています。
4)モンテカルロ法による計算結果 その3
下図は盛土法尻における水平変位の頻度分布図です。頻度分布は概ね正規分布に近く、平均のパラメータを使用した変位程度の頻度が最も多くなっています。最小水平変位が0.48m未満になる確率は1%未満、最大水平変位が0.62mを超える確率は1%未満です。
下図は地表面における鉛直変位(沈下量)の頻度分布図です。最小沈下量が1.1m未満になる確率は1%未満、最大沈下量が1.7mを超える確率は1%未満です。